歴史探偵

趣味の歴史、地理ネタを中心にカルチャー全般、グルメについて書いています。

上野の「西郷どん」銅像はあれで大丈夫なのか?

大河ドラマ「西郷どん」始まった。

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完全に私事ではあるが、一昨年の大河「真田丸」は全回完全視聴を達成した。しかし昨年の「おんな城主 直虎」はほぼ初回で脱落…。

大河を見る習慣がついていると、一週間のリズムで楽しみができるし、歴史好きドラマ好きの人が集まった時の話の"とっかかり"にもなる。ということで、今年は気を取り直し「西郷どん」は全回見てやろう、と決心した。

放送開始までの助走をしっかり走ってやろうと思い「英雄たちの選択」の薩摩特集も、「歴史秘話ヒストリア」の西郷特集も、ひいては(普段ならツマラナイと思って絶対見ない)「ごごナマ」の西郷特集までチラチラ見つつ、自分の気持ちを高めていった。

 

そうして迎えた7日の初回。藩主の跡取り・島津斉彬と下級藩士の少年があんなに親しく話すのかな…女装なんか本当にしてたのだろうか…など、本当の史実はどうだったんだ、と気になるところもあったけれど、全体的にはそこそこ楽しめた。”そこそこ”というのは決して悪い意味ではなく、連続ドラマの初回というのはものすごく説明しなきゃいけないことが多いので、視聴者をストーリーに引き込んで2回目以降も見てもらうというのは、きっと難儀な仕事なのだ。今回は斉彬との劇的な出会いや、郷中同士の確執、西郷が生涯その後遺症を背負うことになる右腕の重傷などをうまく散りばめて、飽きない構成になっていたと思う。

 

自分的に今回印象に残ったところは…

●上野の西郷隆盛像を、その落成式のメデタイ式典の途中で、西郷の妻だった糸が「(西郷は)こげな人じゃなか!」と否定したところ

→こんな場面をいきなり描かれてしまうと、今度から上野公園で銅像を見上げる人たちが「これ、本当の姿じゃないんだろうか」と考えてしまい、落ち着かないと思うのだが、あえてドラマのシーンに採用していたことにはちょっと驚いた。ドラマの冒頭としては「え!そうなの?マジ?」みたいに視聴者の心を揺さぶってその後の展開に興味を持たせるはずなので、その効果を重視したってことでしょうか。ドラマの制作陣が”物議を醸すことを怖れる事なかれ主義者”だとこのシーンを冒頭には持ってこない気がする。

 

●西郷小吉(隆盛の幼名)たちが住んでいる家々が、南方の家っぽく見えてとても新鮮だったこと

→家の周囲の石積みの垣とか沖縄っぽいし、家と家とは屋根の部分でつながっている。庭の大木には、木の上で遊べるようなスペースが設えてあって、ハシゴで上り下りできるようになっている。とにかく今までの時代劇では見たことのない面白い住居だった。オープニングVTRでは建築考証がクレジットされているので、きっと江戸後期の薩摩住宅はあんな感じだったのだろう。ちょうど今発売中の文藝春秋のMook「西郷隆盛を知る」で、司馬遼太郎が「薩摩の郷中は南方の習俗ではないか」という論を展開している。それを踏まえると教育システムも住まいのかたちも、南方系の特色が色濃く出ているのか、と思ったりする。

  

●時折描かれる「桜島」が非常に美しい

 →「日本に、京都があってよかった」とは、かつて京都市が、京都PRのために打ち出していた(やや手前味噌な)キャッチフレーズであるが、それになぞらえて言うならば、「鹿児島に、桜島があってよかった!」どんな場面であれ、背景に桜島を背負えば、そこはたちまち鹿児島の風景。桜島があれば必ず画面が引き締まる。そもそも海の中にあんな図体幅広の火山がど〜んと構えているというのは、日本の他の場所ではまず見られない光景で、間違いなく鹿児島の風景価値を高めている。

  

次回の番組予告を見て、新しい時代を切り開いて行こうとする薩摩の若人たちがどこまでもキラキラしている感じで、なんだかワクワクした(現代だってかなりの変革期だが、こういう若者が出ないのは何故なんだろう。違うか…。自分の周囲にいないだけか?)。

 

次回以降も実に楽しみな「西郷どん」である。

 

※特別展「西郷どん」の訪問記です。

www.rekishitantei.com